ゆうぐれ

ゆうがた うちへかえると
とぐちで おやじがしんでいた
めずらしいこともあるものだ とおもって
おやじをまたいで なかへはいると
だいどころで おふくろがしんでいた
ガスレンジのひが つけっぱなしだったから
ひをけして シチューのあじみをした
 
このちょうしでは
あにきもしんでいるに ちがいない
あんのじょう ふろばであにきはしんでいた
となりのこどもが うそなきをしている
そばやのバイクの ブレーキがきしむ
いつもとかわらぬ ゆうぐれである
あしたが なんのやくにもたたぬような

「ゆうぐれ」   谷川俊太郎